染色作家 
戸谷真子

2001年から約2年間、沖縄の紅型工房で修行したのち京都の芸大で染織を総合的に学び独立。
紅型の伝統的技法を使い独自の世界観を表現しています。
デザインから染め上げるまでの紅型工程全てを一貫しておこないます。

大切にしていること

作品作りにおいて、戸谷が当時より大切にしていること…


伝統的手法を受け継ぐ

沖縄が発祥の紅型。
その紅型に携わるようになり早二十年が経ちました。
今でも修業当時のことを昨日のことのように思うことがあります。

私が制作するものは全て紅型の伝統的手法を元にしています。それは工程だけにとどまらず、道具に至るまで昔からの手法を取り入れています。
取り入れるというよりも、継承しているといったほうが良いかもしれません。

この伝統的な手法を全く崩さず大切に守っているのは、師匠が技術だけではなく紅型の歴史も全部ひっくるめて私に伝えてくれたためです。
昔からの技術や道具を使うことの背景にある重みを知りました。
ですので、手間ひまかかる工程も私にとってはどれも省くことのできない大事なものになっています。
穏やかで寡黙な師匠でしたが、その背中から言葉の端々から紅型に対しての誇りと、紅型を今日に残してくれた先人達を尊敬する気持ちを感じていました。

沖縄の工房を離れてからも紅型一筋ですが、技術だけでなくその背景が体に染み込んでいることが、今は私にとって大きなものになっています。


感動や思いをカタチにする

紅型の古典的な柄は、その多くが中国や日本から渡ったデザインが元になっています。
異国の文化が交じり合う当時の琉球では、舶来品の模様を染めた紅型は最高のお洒落だったのではないでしょうか。
まだ庶民には着用は許されていない時代のことです。
ところが、戦後の沖縄の紅型では沖縄のアイデンティティーを取り戻すべく、
それまでになかった沖縄の植物・生き物などがデザインされるようになりました。
私の師匠もそのようなデザインを手掛けた先駆者のひとりです。

そんな師匠から「あなただけしか作れない紅型をしなさい」と言われたことから、
誰もが染められる古典柄ではなく私ならではの紅型を染めていこうと思うようになりました。

以来、そのときに感動したことや大切に思うものをデザインし、布へと染めています。


「静よりも動」

デザインをする中で重きを置いているのは「静よりも動」ということ。
私の師匠・知念績元先生が最も大切にしていることでしたので、現在に至るまで動きのあるデザインを心がけています。

デザインについては、デッサンから始まることもあれば空想をスケッチブックに描いていくことから生まれるものもあります。
連続柄であれば、上と下がつながるようにパターンを作っていきます。
下絵ができたら、型紙に写して小刀で彫っていきます。
型の面白いところは下絵がデザインの完成ではなく、彫っていく最中にも常に変化し、彫り上げることでさらにデザイン化していくところです。


産地ではないことの葛藤と今後

デザインに限らず色もそうですが、沖縄から離れた私にとっては、
オリジナル性を求めるあまり紅型から離れてしまわないかと不安になることもあります。
産地でない場所で、また沖縄出身者でもない中で、どのように紅型と関わっていくのかは常に大きなテーマです。

しかし、そういった壁を越えてお客様から作品を求めて頂けることは何より進む力となります。
全てはお客様との出会いに恵まれて今日まで続けています。
これからも師匠が伝えてくれたことを大切にしながら自己の技術、表現方法を磨いていきたいと思います。

活動履歴

紅型との出会いから今日まで

作者のこれまで

染色作家 戸谷真子
愛知県名古屋市出身

2001年4月 知念績元氏に師事
芹沢銈介氏の年賀状を雑誌で見たのをきっかけに紅型に興味をもち、大学を休学し(後に退学)沖縄へ渡り、「知念びんがた工房」にて知念績元氏にその後2年間師事します。工房は紅型着物・帯、及び琉球踊衣装の制作しており、紅型についての様々なことを学びました。
2002年4月 沖縄県工芸指導所入所
工房へ通いながら、特別研修生として半年間にわたり、帯・タペストリーの制作に取り組み、伝統技術を習得します。
2003年1月 大学進学のため、知念びんがた工房を離れる
沖縄の空気を感じながら2年間工房へ行きました。知念びんがた工房は紅型御三家のひとつです。 知念さんは紅型を知るには沖縄のことも知らなくてはと、ときどき散歩にも連れて行ってくれ、歩きながら『あれが福木の木でねー』という具合に沖縄の花、木、フルーツの名前などを教えてくれました。工房の庭にはバナナ、パパイヤ、シークワァーサー、デンブ、ドラゴンフルーツに至ってまで実のなる木がたくさんあり、台風の翌日には決まってみんなで庭の掃除からはじまり、終わるといつも昼過ぎになっているのでした。 20歳そこそこの私にとっては、この沖縄での生活は見るものすべてを吸収し、いろんな人に出会う最初の場所となりました。
2005年3月 京都嵯峨芸術大学短期大学部染織コース卒業
桂川の近く、嵐山を背景にしながらの贅沢な環境。河原で焼き芋をやったり、のんびりとした学生生活を送っていました。
2005年4月 京都市上京区にて「工房チリントゥ」開始
小さいながらも1階にギャラリースペースのある2階建ての古民家を借りて、制作と販売を始めました。
ここでの6年半は大切なお客様や友人・この業界の先輩方との出会いなど、今に繋がる基盤となりました。
2012年11月 大阪府豊中市へ工房移転
現在に至る
表彰・入選

表彰・入選

2001年7月 第10回 りゅうぎん紅型デザイン公募展 奨励賞受賞
(沖縄)
2005年3月 京都嵯峨芸術大学短期大学部 卒業制作展 学長賞受賞
2005年4月 第27回 日本新工芸展 入選
(東京都上野の森美術館/京都市美術館展示)
2005年10月 第23回 くらしの工芸展 入選
(熊本県伝統工芸館展示)
2005年11月 第60回 新匠工芸会公募展 初入選
(京都市美術館展示)
2006年10月 第24回 くらしの工芸展 入選
(熊本県伝統工芸館展示 出品作品完売)
2006年11月 第61回 新匠工芸会公募展 入選
(京都市美術館展示)
2007年10月・11月 第62回 新匠工芸会公募展 入選
(東京都美術館・京都市美術館展示)
2007年9月 初個展「紅型展 ~染め咲くいろ~」
(『くらふとギャラリー集』にて開催/京都)
2008年1月 「現代日本の衣匠 Vol.2」出版記念展
(ART BOX GALLERY/銀座)
個展・作品展

個展・作品展

2009年9月 個展「紅型展 ~日々の中で~」
(『くらふとギャラリー集』にて開催/京都)
2011年5月 個展「紅型展 ~初夏の彩り~」
(『くらふとギャラリー集』にて開催/京都)
2012年5月 作品展「戸谷真子~紅型の心をつないで~」
(『大丸京都店』6階催事場にて開催/京都)
2012年9月 個展「紅型暮らし in Kyoto」
(『くらふとギャラリー集』にて開催/京都)
2013年7月 作品展「ナッチリントゥ」
(『アートスペース重松』にて開催/京都)
2015年5月 10周年記念個展「戸谷真子 作品展」
(『ちおん舎』にて開催/京都)
2019年7月 Japan Expo in Paris WABISABIに招待出展
(フランス・パリ)
2020年8月 「紅型 工房チリントゥ 戸谷真子 作品展」
(神戸・元町 丸太やにて開催頂きました)

その他、グループ展・催事多数参加

メディア

メディア

2007年9月 「京都!ちゃちゃちゃっ」
『びびっとくる沖縄の色』 スタジオ生出演

(関西テレビ 京都チャンネル 13日(木)12:00-13:00)
2008年1月 「現代日本の衣匠 Vol.2」掲載
(アートボックス インターナショナル)
2008年2月 「Hanako WEST 4月号」
『京都体験ガイド』 掲載

(マガジンハウス)
2008年6月 「Fe-MAIL」
『おとなのひとり時間』 掲載

(Fe-MAIL)
2008年6月 「雑貨屋さんぽ 京都編」
『上京区・下京区のすてきなお店』 掲載

(リベラル社)
2008年7月 月間「茶の間 8月号」
『夏に似合う色かたち』 掲載

((株)宇治田原製茶場)
2011年11月2日(水) 『ココイロ』
千本通り特集に取り上げられる。
自作のウェディングドレスを着てしまいました。
(朝日放送)
2012年5月10日 日傘掲載
(読売新聞夕刊)
2012年6月 『Ma-cocoro』京都から見つめる、日本の生活 創刊号掲載
「日本を見つめ直すキッカケ人」

(sou・sou 発行 フリーペーパー)
2012年7月 リンネル「とっておきの京都」
(リンネル+InRed特別編集 宝島社)
2013年11月9日(土) 『LIFE~夢のカタチ~』
沖縄の師匠に会いに行き、紅型の原点に立ち返りました。
新作の帯が生まれました。
(朝日放送)
2014年1月9日 『ポテトな時間』
ホッとする時間をテーマに…
(毎日放送)
2014年8月20日 『おちゃのこSaiSai』スタジオ生出演
番組内でウェディングドレスの紹介と紅型体験
(J:COM TV 関西ローカル)
2014年11月3日 『関西の匠』
(eo光チャンネル 関西ローカル)
2015年11月20日 『朝日ファミリー』
阪神・北摂版に掲載
2016年3月8日 『武田和歌子のぴたっと。』出演
「達人列伝!」野球解説者の下柳剛さんのコーナー
(ABCラジオ)

作品工程

着物が染め上がるまで

紅型の工程
デザイン
デザインの元となった梅花藻は澄んだ小川の中に咲いています。
梅のように見えるところから梅花藻の名前が付いています。
滋賀県の醒ヶ井に夏にスケッチをするために訪れました。
スケッチから型紙の元となるデザインをおこしていきます。

型紙作り
連続柄となるように、上下の柄を繋がるようデザインをしたら、型紙に下絵を写して 小刀で彫ります。
伝統的な彫り方は突き彫りといい、点を繋げて彫っていきます。
下敷きはルクジューという名前がついた豆腐を乾燥させたものを使います。
彫り終わったら型紙を補強するため 紗張りをします。

型置き
出来上がった型紙を、布の上に置き、 糊で型を置いていきます。
その後、張り木で反物を張り、伸子をかけます。

染め

色挿し

朝、大豆の絞り汁(豆汁)をとります。
その豆汁と顔料を合わせて乳鉢で磨り潰して、色挿しの顔料を作ります。
これを小さな刷毛を使い全色下塗りしていきます。
(豆汁はその日のうちに使いきるため、その日使う分だけ毎回色を作ります。)

二度刷り

豆汁から顔料作りまでは色挿しと同じです。
色挿しで下塗りしたところに、紅型独特の刷り込み筆で上に重ね、厚みのある色を出していきます。

隈取り

二度刷りした上に、ぼかしたいことろにさらに濃い目の顔料で色を重ねます。
この隈取りをすることで紅型らしさが一気に際立ってきます。

蒸し・洗い
染めたら、色の定着のために蒸してから洗います。

白地上げ
洗い終わったら、反物を張って乾燥します。
この状態が白地上がりです。
地染めする場合には一旦白地に上げてからおこないます。

糊伏せ
地染めの準備をします。
反物に伸子を張ります。
筒に糊を入れて、先から搾り出し模様に糊を伏せて防染していきます。

地染め
刷毛で地入れをします。
地入れが乾燥したら、染料で地染めします。

蒸し・洗い
再び、染料の定着のため蒸します。
その後洗います。

仮仕立て縫い
反物のゆがみを整える湯のしを行った後、展示のために着物の形に縫います。

展示
着物の形へ縫い上げた後、展示をしました。
お客様からのオーダーの場合には、お客様のサイズに本仕立てを行いお渡しいたします。